初めての北アルプス 燕岳 〜 大天井岳 〜 槍ヶ岳

2019年夏。
ずっと憧れていた北アルプスへ、初めての山行。
新座山の会のメンバー4人で訪れた。
3日目の朝に槍の穂先からみた景色は素晴らしかった。

槍の肩から見た朝日

 

どこまでも見渡せる空。
さえぎるものがなく、眼下に山々が見える。
北アルプスは初めてで、そこから見える山がなんという名前の山なのか言うことができなかったが、これからその山々を登ることになるかもしれない。
今回の燕岳から槍ヶ岳までへの縦走の軌跡を歩いたルートや持っていったものなども含めふり返ってみようと思う。

☆今回の登山ルート

【1日目】燕岳登山口から燕岳を経て、大天荘へ
◯ 総コースタイム 11時間、標高差+1400m

中房・燕岳登山口(06:50)・・・合戦小屋(10:45)・・・燕山荘(12:27)・・・燕岳(13:00)・・・燕山荘(13:54)・・・大天荘(17:50)

【2日目】喜作新道を縦走、西岳から東鎌尾根を経て殺生ヒュッテへ
◯ 総コースタイム 9時間50分
大天荘(06:30)・・・ヒュッテ西岳(11:00)・・・水俣乗越(13:15)・・・殺生ヒュッテ(16:20)

【3日目】槍ヶ岳登頂、槍沢を下り上高地へ下山
◯ 総コースタイム 10時間30分、標高差-1680m

殺生ヒュッテ(04:10)・・・槍ヶ岳山荘(05:15)・・・槍ヶ岳(6:00)・・・殺生ヒュッテ(8:35)・・・槍沢ロッヂ(10:30)・・・横尾山荘(12:10)・・・上高地(15:30)・・・高速バス・・・川越(20:50)

☆ 今回準備した防寒着
・厚手のフリース → 今回はあるものを持っていったが、もっと薄手のタイプだと荷物軽量化になるかも。
・薄手のジャケット
・薄手の綿Tシャツ

☆今回初めて用意したもの
・虫さされ用ムヒ
・ケガの際の化膿止め(ドルマイシン軟膏)
・ヘルメット

☆持っていかなかったが、今後必要だと思ったもの
・足の湿布薬

 

8月4日(日)深夜に竹橋駅から毎日アルペン号に乗り込み出発。
バスの中は窮屈で、休憩の度に目が覚めてしまい熟睡はできなかった。
そして朝4時半頃だっただろうか、安曇野市の中房温泉へ到着。こんな山奥だけど辺りは、同じく燕岳山頂を目指す人や他のコースを目指す人でごった返していた。
寝不足で、バスを降りたときはだるかったが朝ご飯を食べているうちに目が覚めてきた。
準備体操をしていざ出発!!

 

燕岳登山口の標識

 

7kgから下手すると8kgくらいあるリュックを背負って登り始める。
荷物を準備している時から、こんな重い荷物を背負って北アルプス縦走なんてできるのだろうかと不安だった。
しかしいざ歩き始めてみると、案外歩ける。
登山リュックは、重みを腰が支えてくれる構造になっているのでそのおかげもあるだろうし、そして人間にも環境に順応できる力が備わっているのだと思う。そんなことを考えながら、地道に一歩一歩進む。

中房温泉から燕岳山頂へと続くこの山道は、北アルプス三大尾根と呼ばれる急登で「合戦尾根」と呼ばれている。
こまめに休憩を入れながら歩いたが合戦小屋に着いた時にはすでに右ふくらはぎが痛かった。
そして、仕事の夜勤明けで仮眠をとってすぐに出てきたKさんもかなり疲れているようだった。

スイカを食べ、さらに頂上を目指す。
登って登って、ついに燕山荘へ。
最後の登りがきつかったが、そんな疲れを吹き飛ばすくらい素晴らしい景色が広がっていた。
若者たちに人気だという燕山荘。カラフルなテント達が山頂付近からも見えていた。

 

燕山荘からの景色

 

燕山荘のテント場

 

合戦尾根登山道から見えた燕山荘

 

そして燕山荘についてからがまた長い道のりだったのだが、1日目のその後の行程を以下の通り。

◯  14:00お昼を食べて、空身で燕岳山頂へ

◯  休憩していた2人と合流後、大天井岳を目指し縦走開始

◯  17:30 大天荘へ到着(この日は大天井岳山頂は登らず)

燕山荘から大天井岳への道のりは、上まで登りきった後の縦走路なので、そこまでのアップダウンはないにせよ、体力的にはかなりきつかった。
疲れがかなり出てきていて、右ふくらはぎも痛かった。
私は持ってきていなかったが、Tさんに湿布をもらう。
メンバーのKさんもかなり呼吸が粗く、こまめに休憩をとった。途中から大天井岳の山容がやっと見え始め、喜作レリーフの分岐までたどり着いた時にはもうすっかり日も暮れて、辺りはガスに囲まれ始めていた。

 

喜作レリーフ

 

そして喜作レリーフからの最後の登り500m。この500mがきつかった。
みんな疲れきっていた上に、なかなかの上り坂で足元もがれ場で歩きづらい。
それまで足取りの軽かったTさんもここで急遽高山病になってしまう。
かたつむりのような歩みでなんとか大天荘へたどり着く。
小屋の明かりがなんとも暖かく、ここまでたどり着くことができたことに心の底からほっとした。
体力の限界に挑戦した一日だった。

大天荘

 

2日目の朝も快晴。
昨日疲れきっていたメンバーも、一晩寝て疲れもいくぶんか回復。
私はいつもの通り、10時頃まで眠れなかったが湿布のおかげで右ふくらはぎの痛みはすっかりとれていた。
次回のロングコース登山では、湿布を持っていこうと思った。
そして、山小屋からは雲海を染める朝日が見えた。

 

大天荘からの朝日

 

朝一番で大天井岳頂上まで登り、そのまま槍ヶ岳へ向けて縦走開始。
大天井ヒュッテ、ビックリ平を経て喜作新道を歩いているあたりでは、青空の下に槍ヶ岳に連なる緑色の山脈がくっきりと見えた。その雄大な景色を右手に見ながら道を進んだ。

喜作新道から見た槍ヶ岳

 

ヒュッテ西岳でお昼を食べ、水を補給。そこから水俣乗越まではかなり急な崖のような所を下へ下へと降りていった。水俣乗越まで100m以上の標高を降りただろうか。この日のわたしたちの目標地点は槍ヶ岳山荘だったので、下った後には当然登らなければいけない。

水俣乗越ではTさんが高山病の心配があったため、1人先に下山することになった。
Tさんとはそこで別れて、わたしたちは予定通り槍ヶ岳へと進んだ。
そこからは、東鎌尾根と呼ばれる道を歩く。その名の通り、鎌のように細く、なかなかの傾斜のある道が続く。
Kさんもかなりバテながらもがんばり、なんとかヒュッテ大槍へと出る。
体力の消耗も激しく、Kさんはそこから後からゆっくりと歩いて来ることになった。そして、ヒュッテ大槍から少し進んだところで問題が浮上。
予定では槍の穂先には登らず、迂回して槍ヶ岳山荘までいくはずだったのだが、道はそのまま槍の穂先まで続いているように見える。このまま行くと槍の頂上を越えて行かないと小屋までたどり着けないという懸念が出てきた。

ヒュッテ大槍を過ぎた地点から見た槍ヶ岳。ここからは槍ヶ岳山荘へ迂回できるルートがあるのかどうか判断できなかった。

 

Kさんはここまでの時点で体力的にも限界に近く、時間も15:30を回っていたので予定していた槍ヶ岳山荘はあきらめて、殺生ヒュッテへ泊まることになった。
帰ってから調べてみたが、東鎌尾根から槍の穂先まで登らずに迂回して槍ヶ岳山荘まで行けるルートがあったようだ。

昨日の大天荘は人気の小屋ということもあり、就寝時間を過ぎてもうるさかったが、殺生ヒュッテは泊まる人も少なく、静かでとても落ち着くことができた。
水や充電器、そしてヘルメットのレンタルも宿泊者は無料とのことでサービスがよくなかなか居心地のいい小屋だった。

8月8日(木)、3日目は朝4時に小屋を出発し、槍の穂先を目指す。
この日も運良く天気は良好。山荘のある、槍の肩に着く頃にはちょうど朝日が見えた。

そこからヘルメットを着装し、槍の穂先へ。
ゴツゴツした岩の急斜面を鎖とはしごを頼りに登る。
こんなに高い場所ではしごを登ることなんてないので、やはり少し怖かった。
一段一段慎重に登る。
ついに槍の頂上へ出た。

槍ヶ岳頂上。登頂を喜ぶ。

 

槍ヶ岳頂上からの眺め。大天井岳(?)方面

 

槍ヶ岳頂上。穂高岳方面。右側に釣り尾根らしきものが見える。

 

そこからはあらゆるものを見渡すことができた。
まだ夜が明けたばかりの霞みがかった空。
澄んだ冷たい風。
槍ヶ岳を囲む山々。山の稜線。雲。
ここまで自分の足で登ってきた達成感。
そして、こういう場所に登ろうとチャレンジしてきた先人達のファイトと、人間の底力を見た気がした。

槍の穂先から降りて殺生ヒュッテに一度戻り、そこからはかなりのスピードで下山していった。槍ヶ岳をふり返りながら、大曲の分岐を経て槍沢ロッヂまで一気に歩いた。

 

途中川のすぐ横を通る道もかなりあり、日が照りつける中涼しさを横で感じながら歩いた。
横尾山荘で待っていてくれた土岐田さんと合流し、横尾山荘から上高地バスターミナルまで、とにかく歩きに歩いた。私は3日目で体力的にもかなりへばっていたが、帰りのバスの時間がせまっていたためそんな泣き言を言うこともできず皆についていくのに必死だった。
おかげで、3時50分に川越まで連れて行ってくれるバスに間に合った。
最後は足が棒のようだったが、みんな本当によくがんばって歩いたと思う。
その日の歩行数は1日で約4万歩だったそうだ!!

北アルプスの美しい景色とともに登ってくだって、歩き通した3日間だった。
今回の山行で最も印象に残ったことは、Kさんのファイトである。
初日からかなりバテ気味だったにも関わらず、最後まで歩き通したKさんのファイトに感服した。
福祉の仕事に看護師として携わっているKさん。
大変な中でも、前向きさを忘れずに進んで行く姿が見えるような気がして、私も見習いたいと思った。
そして、無事に帰ってくることができたことと一緒に山に登ってくれたメンバー3人に感謝したい。

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